ゲームを”ミクロ”と”マクロ”に分解するという考え方があります。
その詳細をゼロから話すことはしないのでググって頂ければと思いますが、可能であれば複数の言及を見てください。見ていただくと……どうにも、このミクロとマクロという概念は明確な線引きがなく人によって語る内容が異なるのが分かるかと思います。
本稿ではミクロとマクロについて、私の考える明確な線引きを示します。
まず語りやすいミクロについて。ミクロとは何なのか。
“ミクロ”とは、”操作”です。
“チートツールがタッチできる領域”と考えると分かりやすいです。またはTASによって表現可能な操作能力、としてもいいかもしれません。
例として格闘ゲームを挙げましょう。格闘ゲームの醍醐味は読み合いにありますが、読み合いに辿り着くまでの洗礼としてのミクロがそこにはあります。最低限のコンボ精度や適切なガードができるかどうか、敵のジャンプを確認してから対空が出せるかどうか、果ては理論値としての起き上がりの最速昇竜が出るか、猶予が短い威力の高いコンボができるか──言い出すとキリがありませんが、このような能力が読み合いをする前提として存在します。
上記のような”操作”に準ずるものがミクロに分類されると私は考えています。そして最も分かりやすく分類するのは、”チートツールで改善可能なものかどうか”を考えることです。
では一方でマクロとは何か。
“マクロ”とは、”意思決定”です。
これだけだと幅が広すぎるので、マクロについてはさらに細分化します。
私はマクロを”弱いマクロ”と”強いマクロ”に分けると明瞭だ、と考えます。
その中でも最も弱いマクロである”1対1での意思決定”について考えましょう。
再び格闘ゲームの話です。格闘ゲームは1対1での読み合いが発生しますが、最も単純な”中段と下段の2択”が最も弱いマクロとして最適な例です。
実際は中段下段以外の択が存在したり、無敵技による拒否の有無など2択からさらに派生した読み合いが存在するわけですが、それは純粋2択を発展させたものだと考えることが出来ます。
これは昨今の流行りである多対多のPvPゲームについても同じことが言えます。
eSportsという銘で隆盛を誇るそれらのゲーム達は、自分も含めた味方それぞれの意思決定がチーム全体の意思決定となり、敵の意思決定とガチャガチャすることで対戦を成り立たせています。
つまりは
弱いマクロ Lv1 : 1対1の意思決定
弱いマクロ Lv2 : 1対多 または 多対多の意思決定
このように定義できます。
では”強いマクロ”についてです。
未だ代替なき偉大なゲーム、Civilization IVのマルチプレイを例に挙げます。
Civ IVマルチの主流はFree for Allです。10名前後のプレイヤーそれぞれがランダムに選出された指導者を率いて内政をし、時には戦闘をし国を繁栄させ、160ターン時のスコアの大小で勝敗を決めます。1位だけが唯一の勝者で、2位以下は等しく敗者です。Free for Allということは基本的には”自分以外は全て敵”といったゲーム性なのですが、Civ IVマルチでは資源交換やチャットによるコミュニケーションを駆使して”一緒にあいつを攻めよう”といった共闘をすることが可能です。最終的にはスコアを競り合いますが、一時的にでも同盟を組めるわけですね。
このようなプレイヤーが味方にも敵にも成り得る状況での意思決定を”強いマクロ”と定義します。
弱いマクロは敵と味方が変わらず固定されているという前提がありますが、強いマクロはその前提すら曖昧な状況での意思決定を求められるものということです。
強いマクロも弱いマクロ同様、2段階に分けます。
強いマクロ Lv3 : 1対多の意思決定(敵味方が変動)
強いマクロ Lv4 : 多対多の意思決定(敵味方が変動)
1対1で敵味方が変動するゲームというのはアイデアとしては面白いですが、私が知る限り存在しないので省いています。
また、さらに高度な多対多で敵味方が変動するゲームというのもとても少ないですが存在はします。
私がパッと思いつくのはEVE Onlineで詳しい説明は省略しますが、自身が所属する組織が存在し、その組織がどの組織と敵対/同盟を組むのかという組織間の意思決定もさることながら、自身が所属する組織内での他者との立ち回りや折衝も絡んだ上で状況によっては自組織と敵対することも有り得るようなゲームであるため、最も強いマクロが求められるゲームに分類されると私は考えます。
整理します。例となるゲームも含めて改めて各マクロのレベルを並べてみましょう。
- 弱いマクロ Lv1 : 1対1の意思決定(敵味方が不変)
例 : H2Hのあらゆる対戦ゲーム(格闘ゲーム、RTS、FPS) - 弱いマクロ Lv2 : 1対多 または 多対多の意思決定(敵味方が不変)
例 : チーム戦のFPS、チーム戦のRTS、MOBA - 強いマクロ Lv3 : 1対多の意思決定(敵味方が変動)
例 : 4X Free for Allのマルチプレイゲーム、一部のボードゲーム - 強いマクロ Lv4 : 多対多の意思決定(敵味方が変動)
例 : EVE Online
私が本サイトで”ミクロ”や”マクロ”の話をするときは、この分類のもとで話すことにします。
本稿はあくまでその分類を明確にするために書きましたが、それだけでは味気ないので1つ余談を入れておきましょう。それは”真のゲーマーが心の奥底で握っておくべき理念について”、です。
昨今はeSportsが流行っているせいか、どうにも”競技性”が重視される傾向にあるようです。対人ゲームにおいてフェアに戦う場を提供するために、極力運(確率)が絡まないようなゲームコンセプトになっていたり、統計上の勝率を均すために頻繁にキャラクターや武器の調整が入ることが望まれるような風潮もそれに含まれます。しかしLv3以上の強いマクロで戦う意志があるゲーマーであれば、“アンバランスであることも、またゲームだ”ということを信じましょう。
4Xストラテジーマルチをやっていると多対1で敵を完膚なきまでにボコボコにすることも、同様に1対多の苦しい状況を強いられることもままあります。それに加えて初期立地や、隣に誰が来るかもランダムです。とてもeSportsの冠を載せられないような公平さとはかけ離れたゲームなわけですが、それもまたゲームであり大いに学ぶ余地のある、研鑽を積むべき価値のあるゲームなわけです(と、私は信じています)。
“勝っても驕らない、負けても腐らない”というのはかの男性向け同人で有名なクリムゾン女史が残した至言ですが、このような結果に依存しない最善を期す考え方は、強いマクロが求められるゲームでも重要です。”アンバランスを受け入れて最善を尽くす”ことができるゲーマーは、”競技性”が跋扈する近年では殊更に稀だと思います。
受け入れましょう。他者の追随を許さない圧倒的な勝利も、細い勝ち筋の糸を手繰って手に入れた辛勝も、あと一歩届かずに土を舐めた惜敗も、笑うしかない惨敗も、等しくゲームなのだと。結果は二の次で、戦い続ける精神だけが最も尊ばれるものなのだと信じましょう。
結局何が言いたかったかというと、私はしばしばロドストの日記の方で”戦うのは、勝つためだ”と書いていましたが、実は嘘なんですよね。勝つのを目的にするのは二の次で、本当に大事なものが別に転がっているわけですが、それを手短に説明することができなかったためそのように騙っていたわけです。すみませんでした。