先日のPLLを見て頭を過ったのがこれだった。
“Engageがやたら美しいレイド”として以前貼ったこともあるレイドだ。このレイドはコンテンツ設計において誘導と散開設計の妙技について1つの高みに辿り着いていると私は評価している。
雑に紹介していこう。
■Collapsing Star
定期的に3つだか4つだか沸いてくる星。勝手に毎秒HPが1%ずつ減っていき、死亡時に全体ダメージを与えてくる。つまり放っておけば勝手に死ぬが、全てが同時に死ぬとワイプなので意図的に倒してヒールをして倒してを繰り返す必要がある。死ぬとその場にBlack Holeを残す。以降CSと表記。
■Living Constellation
なんか弾撃ってくる星。Black Holeに誘導すると対消滅する。以降LCと表記。
■デカいの
ボス。定期的にヘイトリセットがかかるのでスイッチが必要。通常技と同じぐらい頻発する範囲技を使ってくるのでMain TankはMeleeの立ち位置その他諸々に気をつける必要がある。その他諸々は後述。
また定期的にCosmic Smash(上画像の赤いエラプみたいなやつ)を撃ってくる。これはランタゲ3名対象の距離減衰の範囲技である。位置確定から猶予があるので避ける。避けなければ死ぬ。
これまた定期的に全体即死級範囲技のBig Bangを放ってくる。プレイヤーがBlack Holeに入るとしばらく別次元みたいな所に飛ばされるのでBig Bangの詠唱が始まったらBlack Holeに入って回避する(1人だけは入らずになんか頑張って耐える)。余談だが討滅で出るアシエンのエデンドゲートの元ネタはBlack Holeだと勝手に解釈している。
他にもまぁ色々あるのだが、誘導と散開の妙技とやらを語るにはこれだけで十分だ。
まず着目すべきはランタゲ対象距離減衰のCosmic Smash。
これがあるためにある程度散開位置に気を配らなければならない。こと詠唱職の移動を減らすために詠唱職は散らして、他をある程度固まらせるなどを考慮に入れる必要がある。
しかし、Cosmic Smashの発動位置を完璧に制御するのはほぼ不可能である。LCをBlack Holeに入れて消すための誘導役がおり、ランダムポップのCS起因のBlack Holeの位置とLCの位置によって誘導役の位置は一意には定まらない。その誘導役にCosmic Smashが飛ぶことは十分にありえることで、避けるため想定外にバタバタ移動させられることは十分に有り得る。
またBig Bang回避で距離の近いBlack Holeに入るために立ち位置を調整したい&ボスをいい感じに誘導したいとか考え始めるとさらに複雑になる。Big Bang詠唱中以外のタイミングで誤ってBlack Holeに入るとなんかやたら削られるというリスクがあるため、一概にBlack Holeの傍にボスを誘導してボス基準に散開という訳にはいかないし、そもそもLCの誘導役がどこのBlack Holeを使って、Big Bang回避用のBlack Holeをどこに残すかはトライごとにてんでバラバラになる。これはマップの所為でもあるわけだが、一瞥すれば分かるように方角が掴みづらいようになっているし、そもそもLCの誘導は”近いBlack Holeに落としたい”わけで一概に方角を決めてどうのという方針で誘導がし辛い。そもそもCSもLCもランダムポップなのが後を引いており、CSは自傷ダメージにより勝手に死んでいくためにBlack Holeを落とす場所の調整が難しいという事情もある。そしてBlack Holeの位置が一意に定まり辛いということはBig Bang回避時の移動距離も一意に定まり辛いことを指す。
これが私が見た誘導と散開の設計で1つの到達点に辿り着いたレイドだ。
散開する者も、ボスを誘導する者も“自分が立つ位置について考えるべきことは多くあれど、1点に収束し辛く巧みな状況判断を要求される”というのがこのレイドの難しさでもあり、美しさでもあったのだ。
で、なんでこれがPLLを見て思い浮かべたかって、コイツが原因である。
各所で話題になっている、“タゲサが小さくなった”と言われているやつだ。
私見だが、“14の、こと零式には誘導という概念がない”と考えている。
誘導というのは先に述べたような星野郎との戦いで求められるような意思決定が求められるものであって、”ボスを中央に寄せて北を向ける”だけで済むか、精々それに毛が生えた程度に敵を引っ張る/向きを変えるものを私は誘導とは見做していない。まぁ絶なら多少マシだろうが、零式なんざ見るも無惨な状況である。最近のバカデカタゲサや、フィールド外周クソデカボスという誘導もへったくれもないものが氾濫しているのはご存知の通りで、それを見ると”まともな誘導設計作る気ないな”と思わざるを得ない。
話が逸れるが、零式タンク設計への苦言もここで語っておこう。ハッキリ言って今の零式でタンクが2人いる必要なぞ皆目ない。“なぜタンクが複数必要なのか?”という問いに対して“誘導すべき敵が複数いるから”という元来当たり前だったはずのレイド設計が平然と無視されているのは、パンデモの対多数フェーズがある層が何個あったかを考えれば容易に想起できるだろう。例のアレへの意識なのか、単に設計が面倒なのか知れないが零式は最早対単体を叩くだけのゲームと化しているし、タンクが2人いる意味なんぞとってつけたようなタン強スイッチと、ヒラタン、DPSを4人ずつ丁度いい人数に揃えるという人数合わせの意味合いしかない。
無論タンク自身”だけ”を見るとやれることはそれなりにある。自身の軽減回しや範囲軽減/ヒール/バリアを回すことでの貢献、自身の硬さや特にナイトのかばうやLBを用いたカバーにタッチできる領域が広いなど、面白いことを考える余地はあるものの、兎にも角にもコンテンツ側の設計がやる気なさすぎだと私には映って仕方がない。
さて、そんな状況で”バカデカタゲサ”や”外周クソデカボス”への批判もそれなりにあったためかは分からないが、PLLでお披露目された1層はタゲサが小さくなった。
問題はここからである。そういった批判への対応として多少なりとも誘導に何らかの工夫が必要な設計になっているのか、はたまた今までの通り中央に引っ張って北を向けるだけのゲームになるのかで開発の力量が大いに分かるだろう、ということをPLLを見て直感的に確信したのだ。ただ批判されたからそこを修正した近接組の動きに工夫が必要なだけのレイドになるのか、本来適切に設計すれば面白いはずの要素である”誘導”の意味を再認識し、それをレイドに組み込むことができるのか、その違いが分かる瞬間があと1ヶ月そこらで来るのだろう、と。
タンクというのは本来レイドの花形なのだ。”今でもそうだ”と思う人もいるかもしれないが、五番出汁が美味いと言う人間はそれしか口にしたことがないのだろう、と私には思える。果たして煤けたタンクの栄光、あるべき存在の意義は零式に舞い戻るのか、見ものである。