先の日記で戦術/弱い戦略/強い戦略を分類したが、それらをどう使えばゲームへの理解が深まるのかを考えてみよう。
題材はCiv4である。そして最も分かりやすい、抽象度の低い戦術ことタクティクスから述べていく。
Civ4の戦術は戦闘時と非戦闘時に分けることができるが、主たる戦術は戦闘時に集約される。
Civ4の戦闘メカニクスをイチから考えてみよう。
戦闘解決は”1対1″で”戦闘力”をベースとした、”どちらかが死ぬまで”の殴り合いを行う
戦闘力3のユニットと戦闘力3のユニットが戦えば、勝率50%でどちらかのユニットが死ぬまで殴り合う。”どちらかが死ぬまで”というのは、攻城兵器の攻撃時や撤退昇進を付けているユニットの戦闘時など一部例外が存在するが、おおよそほぼ全ての戦闘で適用されると考えてよい。
戦闘力が同じ場合の勝率が五分であることは先述した通りだが、これが3対2.9とわずか0.1の差があるだけで3側の勝率が66%に跳ね上がる。この戦闘力という絶対的なパラメータの大小が問われるのがCiv4の戦闘の基本理念である。
一方で戦闘力3の1ユニットと、戦闘力3の2ユニットがいた場合、後者が前者に2ユニットをまとめてぶつけた場合は、まず戦闘力3のユニットと戦闘力3のユニットが戦い、前者のユニットが勝利した場合は削られた戦闘力のまま新たな後者のユニットと戦うことで戦闘が解決される。一般的に同程度の戦闘力の相手との一度の戦闘で戦闘力はそれなりに削られるので、軍量は多ければ多いほど明らかに優勢となる。
一度の戦闘で勝った場合にでも戦闘力がどれだけ削られるかというのは……正直知らない。どこかですごく詳細に解説していたサイトを見たことがある気がするが、それが正しいかの検証はできていない。そもそも先制攻撃の昇進が存在したりと昇進やユニット次第で戦闘力の損害も変動するので、プレイ中に計算で導出するのは現実的ではない。ただ防衛志向の長弓にさらに大将軍を同行させた、都市防衛と先制攻撃マシマシの通称”イチロー”は信じがたいほど削られないことがマルチ勢の間での暗黙知となっている。
このしょっぱなの解説の時点で強調しておくべきなのは、このメカニクスが既にCiv5, 6とは異なるところだ。5,6は戦闘時に互いの体力を削り合うが、一度の戦闘で”死ぬまで殴り合う”ことはしない。またCiv4の戦闘は撤退した場合でもある程度”互いのユニット”が戦闘力を削り合う結果となるが、Civ5, 6は弓に代表される射撃ユニット或いは都市砲撃は”離れたマスから一方的に敵に損害を与える”という点でもCiv4との戦闘とはまるで違う。Civ4にはゼロリスクの戦闘は存在しない。この一点だけでもCiv5, 6と全く違うと言えるだろう。Civ5, 6は敵よりも速く射手を動かしてノーリスクで敵を削る重要性が高いとかいう意思決定と関係ない要素が求められるし、非スタック制により無駄にミクロが複雑になるという点でも、マルチにどれだけ向いてないかという話に派生すると止まらなくなるのでこの辺にしておく。
攻城兵器による攻撃は、”1対1″だが”複数の敵に損害を与える”副次的効果を持つ
攻城兵器で敵を殴った時は掲題のような挙動を取る。攻城兵器自体の戦闘力は低いため、攻撃した場合十中八九お亡くなりになるわけだが、この副次的損害の恩恵が大きいために、まず攻城兵器で敵を殴って敵ユニット全体の戦闘力を削った上で、通常の戦闘ユニットで削られた敵軍を狩っていくというのが野戦の基本戦術となる。
この副次的効果は攻撃時にしか得られない。つまり野戦で攻城兵器を絡めた戦闘を行う際は、自軍が攻撃側になることが望まれる設計になっている。これは後述する”防御側に優位な戦闘力補正”との絶妙な天秤となっている。
地形による戦闘力補正が存在する
丘では+25%, 森では+50%の戦闘力補正が存在する。これは”丘/森にいる相手を殴った場合に相手に補正が入る”ことを指しており、”丘/森からよそにいる相手を殴った場合にこちらに補正が入る”わけではない。
戦闘力が0.1異なっただけで勝率が大きく変わるCiv4において、この補正値は極めて大きい。戦争の際には敵の進軍を阻む或いは味方の進軍を優位にするという点でこれらの地形を駆使するのが軍移動の基本理念となる。
また川を超えて敵を殴る際は、敵側に渡河ボーナス+25%が入る。輸送船から直接都市に上陸して攻撃する場合も敵側に上陸ボーナス+25%が入る。渡河と上陸による補正は攻撃側の昇進で打ち消すこともできる。あとは要塞とかいうやつを建てれば+25%になったはず。
防壁/城または文化力による都市駐留時の戦闘力補正が存在する
通称文化防御。
都市の右上にちっちゃく書いてある +60% というやつがそのまま都市上ユニットの戦闘力補正となる。
文化防御は攻城兵器で削ることができるが、スパイの都市反乱でも1ターンだけ0%にすることが可能。
攻城兵器は副次的効果によって野戦でも重要という話を先程したが、文化防御を削る役目としても重要となるので、野戦で副次的効果目的に攻城兵器を減らしすぎると、肝心の都市攻略時に数が足らんという状態になることもある。これはつまり野戦と攻城での攻城兵器の使い方の塩梅を考えなければならないということを指す。
“守りを固める”命令による戦闘力補正が存在する
守りを固めるという命令をしたユニットは、その場に留まり毎ターン+5%、最大+25%の戦闘力補正を得る。守りを固めるのは騎乗ユニットには不可能(コンキスタドールを除く)であることから、騎乗ユニットは機動性には優れているが都市防衛など、特定の地点の防衛には不向きである。
戦闘解決時は、防衛側からは最も勝率が高いユニットが選出される
平野にいる敵側に斧兵、槍兵、剣士がいるとして、こちらが騎士で殴りかかったとする。
昇進とか細かい所は無視して、その場合戦闘解決は”騎士VS槍”で行われるだろう。
攻める側としては斧兵や剣士など”明らかに勝てる”ユニットと戦ってほしいわけだが、そうは問屋が卸さない。防衛側にとって最も勝率が高くなるユニットと戦闘をさせられるというのがCiv4の戦闘のユニークなところだ。
このメカニクスは、兵種を単一で染めるか、複数に分けるかという編成を考える時に重要となる。単一兵種の場合再編が容易だが柔軟性を欠き、複数兵種の場合その逆といったような天秤になっている。簡単な例で言えば、斧カタパという至極簡単な編成に槍兵を数ユニット混ぜるだけで騎乗ユニットからの強襲への耐性がつく。一方で斧分に回せたユニットを槍に変えたことで、対白兵ユニットでの優位性を減らすことになる。まぁ簡単に考えるならば、複数兵種による進軍は敵からの攻撃に対する耐性が高い(防御側に回った際に強い)とだけ理解していればよい。
騎乗ユニットによる戦闘解決時は、攻城兵器に副次的損害を与える側面攻撃が存在する
先の内容に付随する話だが、例えば騎士で敵を殴ると、敵の長槍と戦闘する最中後ろにいるカタパにもダメージが入る側面攻撃という要素がある。側面攻撃の存在は、騎乗ユニットにとって”守りを固める”命令の代替としての防衛戦術として存在すると解釈することができる。つまり防衛戦争時に一般的なユニットは地点防衛用として、側面攻撃を持つ騎乗ユニットは野戦迎撃用の遊撃部隊として運用を分けることが一般的に望まれる。
なお側面攻撃の被害は戦闘解決時の防衛ユニットの強さに応じて変動するので、被害を減らしたければそもそも戦闘力が高いユニットや、長槍などその時出せる最強のアンチユニットをちゃんと用意する他ない。或いは騎士から攻撃を受けないように敵領の道をちゃんと切りながら進軍するなどの工夫が必要となる。
各ターン、自領にいるユニットは一定割合回復する
そもそも傷ついたユニットを回復させる命令が存在するが、それとは別に自領にいるだけでユニットは一定割合回復していく。この仕様は自領で敵を迎え撃ち、防衛する時においてすこぶる重要である。防衛直後のターンでは、敵軍は傷ついているが、自軍は1ターン分だけ回復している。これが大軍同士の決戦となれば無視できないほどの戦闘力の差となるため、ひとえに防衛側が攻撃側より優位を取りやすいメカニクスと解釈できるし、長期戦になればなるほど防衛側が有利になる。また、敵領内で攻城兵器を犠牲にして副次的損害を与える攻勢に打って出たならば、そのターン中に勝ち切ることが強く望まれる。1ターンでも敵軍が延命してしまうと、回復される分こちらが不利になるからだ。
ここまで述べた内容が戦闘時の戦術である。一方で非戦闘時の戦術というものは略奪というたった1つのアクションしかない。しかしこれもまたCiv4の戦争に中々の奥深さを提供するものだ。略奪の目的と効果を述べていこう。
資源改善施設の破壊による敵国力への攻撃と、略奪金による実利を得る
特に敵の小屋を焼けば敵国に経済的な打撃を与えられることと、小屋から得られる略奪金は中々馬鹿にならない。敵の資源改善施設を破壊することで敵の生産力に打撃を与え、長期的に戦闘ユニットを出す総数を減らすなどの効果もある。無論早急に敵都市を奪取できるのであれば資源改善施設を略奪せずに残しておき、占領後にそのまま利用することも可能だし、敵の小屋都市の小屋を全て略奪した上で、占領後は畑工房による生産都市にシフトさせるといった略奪金を得つつ都市の運用を切り替えることも有力な選択肢だ。
道を切ることによって敵ユニットの移動を阻害する、或いは資源ルートを切る
道を切ることで敵ユニットの機動力を下げることができる。これにより敵増援の到着を遅らせたり、或いは戦略資源のルートを切ることで後方の都市で軍事ユニットの生産を止めることができる。特に最序盤では馬、銅、鉄といった戦略資源が1つしかない場合にそれを切られると弓兵しか出せなくなるために、戦略資源を巡った攻防というものが都市の奪い合いよりも重要になったりする。本来は戦略資源の防衛といったプランニングは都市を建設する段階で考慮に入れたほうがよい。本当に大事な資源は都市から1マス圏内に入れろとは良く言われる格言だが、これがマルチになると、本当に大事な資源は真上に都市を建てろになったりする。
これがCiv4の戦闘メカニクスである。シンプルで美しいとか思ってたがいざ文字に起こすとそれなりの分量になってしまった。ここから何を考えるべきなのか……まず軍編成について考えてみよう。どの時代にどんな編成をすれば強いのかを考えることは、戦争のパワースパイクをどこに持っていくべきなのかの理解に繋がる。
Civ4の戦闘メカニクスで最も注意すべき存在は騎兵による側面攻撃である。攻城兵器による副次的損害及び文化防御を削る重要性はCiv4を触った人間であれば直ぐに分かるようなものだが、側面攻撃というメカニクスは対攻城兵器で凄まじい威力を発揮する。ここからまず分かることは、中世からルネサンスまでの騎士が頭1つ抜けて高い優位性を持っているという事実である。騎士が出ている文明に対してカタパやトレブを揃えて進軍することは大きなリスクを孕み、同時代での有力ユニットであるメイスでは勝てない。長槍を揃えれば騎士へのプレッシャーとなるが、長槍では都市防衛の長弓を抜くのに苦労する。マヌケットなどは土俵にすら上がっていない。唯一対騎士にワンチャンあるのは象であるわけだが、側面攻撃が存在するせいで殴り合った結果象が生き残っても裏の攻城兵器が壊れてしまえば都市攻略は絶望的だ。という一面も加味すると、各時代で強力な編成の筋道が分かってくる。
古典~中世以前
斧兵による対白兵ユニットへの制圧力と、対斧兵で優位の取れるチャリオット、チャリに優位が取れる槍兵の三つ巴の様相を呈する時代であるが、この時点で象が頭1つ抜けている。そのためこの時代でちゃんと戦争をしようとなった場合には象パ編成が盤石。この時代でカタパに対して側面攻撃ができる弓騎兵という存在があるが、弓騎兵自体が生産コストに対しての戦闘力に劣るユニットであるため、弓騎兵は奇策程度でしか運用されない。(この弓騎兵の扱いも史実通りでかつゲームバランスを適正に保っていることを私は高く評価している。弓騎兵が安価で強力であればゲームとして成立しないからだ)
ちゃんと全力で象パをした場合は中世に差し掛かった段階、騎士が出始めたぐらいのタイミングではまだ勝算があるというのも三つ巴編成より強いところ。しかし仮想敵国と自文明の相性を鑑みれば、象パを出さなくても悠々と勝利することも可能である。例えば敵国に馬がなく、自文明が攻撃志向で敵文明が攻撃志向でも防衛志向でもないのであれば、斧パをちゃんと数出せば敵側は為すすべもないだろう。この事実だけで攻撃志向はマルチで評価が高い。
中世
騎士の全盛期。互いに騎士がいるなら側面攻撃を恐れて戦争できなさそうだが、都市が丘にないとか壁がないとか、都市防衛戦力が少なければ文化防御を削らずに騎士の飽和攻撃で攻めればよいという戦術も取れるため、兎に角騎士を出すことが望ましい。馬がない文明はここをどう凌いでさっさと次の時代へ内政をスケーリングさせられるかが求められる。
大して内政力が強くもないビザンティンことユスティニアヌスがことマルチでTier Sに位置するのは、ひとえに騎士のユニークユニットであるカタフラクトが信じられないぐらい強いからに他ならない。戦闘力が10から12になっただけというこの2の差がCiv4では絶対的な差となるのだ。そもそもユスティであれば胸甲騎兵を出す必要がなく中世の時点で最終兵種が揃うというだけで、周辺国が口裏を合わせて序盤で滅ぼしに来る要因となる。
ルネサンス
再度三つ巴の時代。対擲弾兵で戦える胸甲騎兵、胸甲騎兵に戦えるライフル、ライフル相手に優位な擲弾兵という編成になっており、そこにカノン砲が混ざる。もう少し時代が進むと胸甲騎兵上位の騎兵隊が出るが、依然ライフル相手に優位は取れない。ある意味バランスの取れている時代ではあるが、相対的に戦争が一筋縄ではいかなくなる時代でもあるので、シングルであれば”同格の文明と戦争するのはかなりリスクがある”ことを覚悟しなくてはならない。
近代
近代で重要なのは、近代終盤で登場する戦車である。正直戦車さえ出れば、戦車単で飽和攻撃を行うのが明確に強いムーブであるが、近代序盤で大真面目に戦争をするのであれば、歩兵と長距離砲、そして空軍を適切に運用する必要があるだろう。
現代以降は省略するが、時代ごとにユニット相性が面白い変遷を辿っていることに気づくだろう。それは三つ巴 → 騎士ゲー → 三つ巴 → 戦車ゲー と時代によってちゃんと相性を考えないといけないタイミングと、単一の兵種が頭抜けているタイミングが交互に来ている、ということである。
これを頭に入れた上で、私はいつ戦争をするべきなのか、というパワースパイクをゲーム毎で考えていく必要がある。この話は弱い戦略で考えることにしよう。