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Tier 7

査読用の記事の閲覧数がえらい伸びている。まぁ見たい気持ちは分かるので、そこに繋がるかもしれない小咄でもしよう。ゲームの設計、アーキテクトの意図を掌握する重要さについての話を。


2021年。格闘ゲームであるギルティギアの新作が発売された。

詳細は省略するが、新作のそれは従来のものとは設計を大きく異するものだった。前作Xrdがさらに前作XXの延長のようなゲームだったのに対して、ストライヴことSTはそれまでにあった多くのシステムを排し、ゲームスピードを極端に落とした。目的は格ゲー新規層を取り込むためだった。

4Gamer:
 苦労話も山ほどありそうです。

片野氏:
 いくらでもあるんですが,そのなかでも新規のプレイヤーに向けての施策や開発はとくに苦労した気がします。我々がこれまで拾いきれていなかったマーケット,コミュニティに対して作品を届けていく。これが一番の課題でした。–(中略)– ただGGSTは挑戦するタイトルでもあったので,そこは一度リセットしてしまおうと。もともと好きだった人がガッカリするかもしれないけど,それでも今回は挑戦しようと。開発も宣伝もそこを意識していましたし,その考えは今でも続いています。

https://www.4gamer.net/games/527/G052700/20220922044/

結果としてSTは売れたわけだが、数年後に風向きが変わることになる。そう、スト6だ。モダンという新規にも取っつきやすいシステムや大々的にかつStreamerを絡めたマーケティングが功を奏し、格闘ゲームというジャンルは未だ嘗てない程の盛況を博していると言って過言ではない程にスト6は成功している。

GGSTも十分にその役割を果たしたのだが、スト6がそれを上回る程に新規層を取り込み、定着させていると言えるだろう。ではGGSTはその後どうしたのか。2023年8月に戦闘の根幹にテコを入れるアップデートを実施している。ちなみにスト6の製品版発売は2023年6月だ。

共通システムを追加することによるゲーム全体への影響の大きさは語る必要がないだろう。このパッチによりSTは別ゲーと化した。それはプレイヤーに新鮮さを齎すと同時に、先述したスト6の事情を理解している者であればうっすらともう一歩深いところの目的を察することができる。新規の取り込みという点でスト6に明らかな軍配が上がる以上、独自色を強める方向にシフトしようという開発の思惑があるのではないか──と。

ちなみに2023年5月末には恐ろしく難易度の高いキャラクターも実装された。上記の読みが当たっているかはさておき、GGSTは元々あったギルティの強みでもある尖った方向に進んでいくのではないか──ということをゲームを長く追い、かつ他の競合作品と比較することで考えることができるわけだ。


同じような話はMOBAにも当てはまる。League of LegendsことLoLが登場したのは2009年。登場当時のLoLはDota Allstarsから分派したMOBAという側面が強かった。Dodgeが存在し(今やJaxの専売特許となった)、対象指定のスキルも多く、ステルスの概念もあった。ポストDota 1と言うべきLoLは当初から成功を収めていたわけだが、2013年にValveがDota 2を出してから設計を”今のように”シフトさせたと考えると昔と今の設計の違いについても合点がいく。対象指定を減らしてよりスキルショットが重要となるようにし、オブジェクトの導線を分かりやすくすることで集団戦への発展を明瞭にした。Dodgeもステルスも消滅してよりライトユーザにとって分かりやすく、かつより”Dotaではない”独自色を出すことに注力した結果が今のLoLと考えるとどうだろうか。Dota 2登場以前と以後というくびきを立てるだけで設計の意図が推し量りやすくなる。


FPSについても同様だが、FPSについては枝葉が多く語ることが難しい。FPSというジャンルにおいて無類のゲーム表現を追求した巨人Valveが提供するCounter-Strikeを筆頭に、相も変わらずLoLだかTFTのようにRefineすることだけは上手なRiotが拝するValorant、革命児とも言うべきPUBGが爆発させたバトルロイヤルを何故か競技シーンまで昇華したApex(開発どこだっけ?)、MOBAの元凶の元凶を生み出したりMMOの王とも言うべき”PvP”に畏るべき知見を持つBlizzardが擁するOverwatch、Old Godが辿り着いた楽園Quakeなど語りだすと枚挙に暇がない。しかしまぁ、私にはリコイルの有無、ヘッドショットの有無を考えるとそれなりにシンプルに考えられるのではないかと思う。加えて、スキルの有無とロールの有無を考えると興味深い”隔たり”を見つけることができるだろう。

余談だがCSが日本では閑古鳥が鳴く様なのは苦笑すると同時に、Blizzardが日本市場をよーく理解していることに天を仰がざるを得ない。BlizzardはSC1やDiablo2は日本語版を出していたが、Diablo2の翻訳品質の悪さや、WoWの日本でのサービス提供云々で結局要求品質を満たす企業が現れなかったことも含めて、長らく日本という市場を見限っていた。それはそれ以降の多くのゲームが日本語化されていないことからも顕著なのだが、唯一の例外がOverwatchだ(Diablo 4?そんなゲームは出ていないぞ?)。私にはBlizzardの高笑いが聞こえて仕方がない。エロいキャラいるし日本でも売れるっしょこれという高笑いが。実際に日本におけるCSとValoのユーザ比率を見てもそれは正しいことが明らかだ。日本人はキャラゲーじゃないと興味を持たない。

当然これは私にとっても図星である。そりゃあ私が14でわざわざレイドくんだりに励むのは、薄い布を纏ったバインバインのミコッテがカワボで嬌声を上げる様を見たくて見たくて見たくてたまらないからだ。Blizzard先生の慧眼にはかないませんなぁ。ハッハッハ。


で、これが7.0の何の話に繋がるのかは、出てのお楽しみということで。乞うご期待。