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吹雪の爪痕

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以前書いたやつですが、”いや、流石に開発がAlgalonの時期のWoWを知らんわけないよな……”と疑問が浮かんだので、ちょっと調べてみました。

まず、根性版のサービス開始は2010/09/30です。
その品質の悪さに大炎上したのは当時を知る人であればよく憶えているでしょう。馬鳥というハイセンスなワードも生まれた頃ですね。

4gamerが提供しているインタビューには、根性版が炎上した後、吉Pが参画した時のことが語られています。

ただ,それからも現場の悲鳴が止まらなくて……ちょっと相談に乗ったとき,スタッフが涙を流しながら語るんです。「『World of Warcraft』(以下,WoW)と比べるべくもなく,FFXIVには機能もコンテンツもない。

内なる“怒り”が新生FFXIVを作った――不定期連載「原田が斬る!」,第6回は「ファイナルファンタジーXIV」吉田直樹氏に聞く,MMORPGの過去と未来

この頃のWoWはというと、2つ目の拡張パックの途上にいました。以下の図のラスオブザリッチキングって書いてるところです。

このグラフの真偽はともかく、文句なく”WoWが1つの隆盛の頂点を極めた頃”だと言って差し支えないでしょう。

その黄金期の所以も語っておきましょう。ただの歴史の授業です。
かつてWarcraft 3というRTSがありました。

Warcraft III was a commercial success, shipping 4.4 million copies to retail stores,[1] selling over a million within a month. 

https://en.wikipedia.org/wiki/Warcraft_III:_Reign_of_Chaos

ブリザードの鳴り物入りで発売されたそれは上記の通り恐るべき売上を叩き出しました。
さらに当時はクラックへの対策が十分に発展しておらず大量の海賊版が出回ったという事情も踏まえ、千万を優に超えるプレイヤーがいたとされています。これは今よりもずっと小さい当時のPCゲーム市場の大きさを考えると恐るべき規模です。(話は脱線しますが、現在でもPvPゲームジャンルとして大きなシェアを誇るLoLやDota 2などのMOBAの源流がWC3にあったことも要因としては大きいです。DotA 1と言うべきDotA AllstarsはWC3のMODとして作られたからです)

超雑に解説すると、そのWC3の主人公格であるArthasはストーリー中に闇落ちし、Lich Kingとなります。
察しのいい人はこれだけで予測がつくと思いますが、WoWの第二の拡張であるWrath of the Lich Kingというのは、WC3で闇落ちした主人公の、その後の顛末が語られるというストーリー的にも極めて重要なタームになっていました。

WoWではパッケージ絵になるようなその拡張での最大の脅威との対峙は、拡張最後のレイドとして実装されます。そのLick King戦が実装されたのが2009/12/08。そして次の拡張であるCataclysmが発売されたのが2010/12/7。根性版が出て盛大にコケたのはまさにこの間なわけです。

ゲームデザインチームには,今のMMORPGを知ってもらうために,まずWoWをプレイするように指示しました。おおよそ3か月くらい。英語が分からなくても,ジャーナルの色が変わっているところを追いかければ大丈夫だからって。

内なる“怒り”が新生FFXIVを作った――不定期連載「原田が斬る!」,第6回は「ファイナルファンタジーXIV」吉田直樹氏に聞く,MMORPGの過去と未来

この指示がCataclysm実装前にあったのか、後にあったのかは定かではありません。さらにジャーナルの色が変わってる所を追いかけろというのは要はメインクエ的なものを追いかけろという意味だけであって、WoWのレイドに参入するハードルの高さも考えると開発がレイドまでちゃんとやったかと言うと眉唾でしょう。

しかしまぁ、レイドを実装するためには当然WoWでのレイドとはなにかをリサーチをするでしょう。その際にLich King戦はほぼ確実に見ているだろう、と推測できます。ストーリーの結末についてめっちゃバズってましたし。拡張最後のレイドだったという点でも、です。

しかし……ここで14がLich King戦から持ってこれたもの、持ってこれなかったものを考えると……なんか悲しくなってくるんですよね。

百聞は一見にしかず。見てみましょう。

タコ殴り演出

Lich King戦ではボスの体力を10%まで減らすと強制全滅演出が入ります。
その後、

このオッサンがLich Kingの持つ剣をぶっ壊して、なんやかんや全員生き返って”無抵抗なボスをタコ殴りにする”フェーズが最後に待ち構えてます。これだけ見ると間抜けな絵面になりそうに思えますが、実際には上述したWC3から続く闇落ちした強敵に引導を渡す一合という割とエモい感じになっています。

で、14でどうなったかというと、こうなりました。

これ撮るためにわざわざN共鳴4層行ったってマジ?
まぁこっちにはちゃんと制限時間がついてるんですけど。

こんなただの演出面についてはどうでもいいです。次だ次。

全体蘇生演出

先述した”なんやかんや全員生き返って”のくだりです。

Lich Kingが持つ剣にはArthasの父親の魂が囚われているのですが、先程のオッサンが剣を叩き割って父親が解放された後に父親がヒラLBを使って全員が生き返ります。

こういう演出は14だとバハや煉獄4層のフェニックスでの再生として表現されてました。これは大変FFらしくていいと思うんですが、一点不満があるんですよね。

14のヒラLBって”問答無用で叩き起こす”感じで蘇生されますが、Lich King戦のそれは”いつもの蘇生の延長”として表現されます。つまり、こういう表記になるんです。

Terenas Menethilが解放されたArthasの父親の名前です。
あたかも人から蘇生を受けるが如く、物語上のキーパーソンであるNPCからの蘇生が明確に表現されるという意味で14にはできない優れた表現だと今でも思います。初見の時は割りと震えました。

まぁこんなただの演出面についてはどうのこうの。次。

立体戦闘

明確に14が持ってこれなかった要素です。

WoWは立体で、14は平面のゲームです。

WoWで”鳥を狩って肉を持って来い”というクエストがあった時に”ほーん”と何も考えずに空を飛ぶ鳥を撃ち落としたら、鳥の死体がそのまま谷底へ落ちて行って”肉取れないじゃん…”となったことがありました。

このようなことは14では起こり得ません。空を飛んでいる敵なんて存在しないからです。そこには空を飛んでいるように見えて地上にいるヤツしかいません。

なので……このフェーズを14では絶対に再現できません。SSだとどうなってるのかサッパリなので動画を貼っておきます。

Lich Kingの剣に吸われ、剣の内部でTerenasと相対する場面です。
ここでは空から降ってくる爆弾だか星みたいなのを全員で避けながら空を飛ぶ雑魚を処理する(Terenasを守る)というフェーズになっています。

ここがですね、戦闘設計において14がWoWを決して超えられないという悲しい現実を突きつけてくるんですよ。

先述した通り、14は平面のゲームです。空から降ってくる隕石も結局は床範囲として処理され、人も敵も空を飛べず(WoWには飛行しながら戦闘するレイドが存在します)、マーカー処理時にジャンプしたら変な挙動になる始末です。

14の名誉のために言っておくと、例外として覚醒編4層があります。クラスタルアップリフトですね。14″唯一の”立体的な戦いができるコンテンツといえるでしょう(そのため私の覚醒4層への評価は極めて高いです)。

その開発インタビューを見ると、

──そうしたタイタンのビジュアルも特徴的ですが、高低差を取り入れたギミックにも驚かされました。高低差はテクニカルな部分も含めて問題はなかったんですか?

中川(大)すごく問題は出ましたね。それでも高低差を取り入れた理由は、巨大化したタイタンの見せ場というのを作りたかったからです。地形を変えるほどの力を持っているというところが伝わるとうれしいなと。

『FF14』の高難易度レイドはこうやって作られている! 希望の園エデン:覚醒編の開発者4名にインタビュー(後編)

と言及されています。

“そりゃ厳しいでしょうよ。立体で戦えるゲームエンジンじゃないんだもの”の一言に尽きます。

一方でWoWは空に敵を配置しました。もしこの数の敵が14のように地上にいたらどうなるでしょうか。見てくれも悪いわただの範囲焼きゲーミングになるわというだけの未来しか見えないでしょう。そういう意味で立体戦闘ができるゲームとできないゲームではレイド表現の多彩さがまるで異なります。

集合戦闘

これも持ってこれなかった要素です。全員でスティックしながら色々処理したり戦ったりする要素ですね。先の動画では空から降ってくる星らしき何かを避けるために全員で集合しながら行動しているのが分かります。

“いや、あるじゃん”と人によっては思うかもしれません。ありません。

バハの群龍、竜詩の邪念の炎を考えてみましょう。“自分の画面での他人の位置と実際の位置は違うから気をつけろ”といった趣旨の解説を見たことがある人が多いのではないでしょうか。

なぜこのようなことが起こるのかと言うと、それが14のサーバとネットワーク分解能の限界だからです。いちレイドプレイヤーとしては見えるキャラクター位置と実際のキャラクター位置のズレが極力小さくなるように、サーバ処理能力とネットワーク処理能力を十分に割り当てて欲しいものです。しかしまぁある程度の妥協点がないとサービスとして成り立たない……のですが、上述したような解説があって皆がそれを理解している程度には、14の戦闘システムは分解能が低く、実際にそれがレイドで致命的な結果を起こすことに繋がっているという現実があります。

結果として何が起こったのかと言うと、オメガの最終フェーズ、リミッターカットです。

これもまた全員でスティックしながら行動する類のギミックですが、”IDかよ”と言いたくなるような”床範囲が出るのを見てから移動、床範囲が出るのを見てから移動……”をします。

なんでこんなわざとらしい床範囲が今更絶に出てくるんだという話ですが、それがゲームエンジンやサーバ、ネットワークにテコ入れをせずに先述した群龍や邪念の炎での位置ズレの問題点を解決する唯一の方法だからです。
何かしらの予兆を見て動いて、止まって、何かしらの予兆を見て動いて、止まって……と動きの合間にワンクッション入れることで分解能の低さをカバーしているのです。同じ考え方を適用するとパンクラも4-4でスティックしているからと考えられますね。

これは開発からの敗北宣言だと私は捉えています。“もう戦闘の基幹を担うシステムにテコ入れはできないので、そういう対処でギミックを表現するしかないんだ”という。

このような”妥協のスティックギミック”はテマにもありました。が、少なくともそこで出てくる予兆は”IDでよく見る”ただの床範囲ではなかったという点で”まぁ…”と思っていたのですが、オメガの体たらくで絶句した感じですね。

これが14の開発が見た先駆者の姿と、実際に生み出されたものの差異と考えるとどうでしょう。WoWを知らない者にとってはどうでもいいことでしょうが、少なくとも私の胸には大きな爪痕が残りました。魔剣の中の60秒で垣間見た立体戦闘と集合戦闘の美しさを見ることは14では叶わないのだろうという諦観と共に。

開発には是非”望むものは作れたか?”と聞いてみたいですね。どんな回答が来るのでしょうか。